問題と課題の違いとは?経営改善で「何をやるか」を整理する考え方

「当社の課題は、売上が減っていることです」
仕事ではよく聞く表現です。
日常会話としては十分通じます。
ただ、経営改善を考える場面では、
「売上が減っている」
という状態と、
「その状態を改善するために何をするのか」
を分けて考えた方が、話が整理しやすくなります。
私は中小企業診断士として課題整理をするとき、
問題=望ましい状態と現状とのギャップ
課題=そのギャップを縮めるために取り組むこと
と整理しています。
言葉の定義そのものを覚えることが目的ではありません。
大切なのは、
問題を見つけただけで、解決した気にならないこと
です。
問題とは「理想と現状の差」
例えば、
目標売上 月1,000万円
実際の売上 月800万円
だったとします。
この場合、
200万円の差が生じています。
これが問題です。
ただし、
「売上800万円」
だけを見て問題とは言えません。
会社によっては800万円で十分な場合もあります。
つまり問題は、
現状だけでは決まらない
ということです。
「本来どうあるべきなのか」
との比較で初めて見えてきます。

課題とは「何に取り組むか」
問題が、
「目標売上1,000万円に対して実績800万円」
だったとしても、
すぐに、
「営業件数を増やす」
という課題になるわけではありません。
なぜ売上が200万円足りないのかを考える必要があります。
例えば、
- 新規顧客が減っている
- 既存顧客の購入頻度が落ちている
- 客単価が下がっている
- 営業担当者が不足している
- 商品の競争力が落ちている
など、いくつもの原因が考えられます。
原因を確認した結果、
「既存顧客の購入頻度低下が大きな要因」
と分かったなら、
課題は、
既存顧客との接点を増やし、再購入率を改善する
といった形になります。
ここまで来ると、行動へつなげられます。

「問題」と「原因」と「課題」を混ぜない
実務では、この3つが混ざりやすくなります。
例えば、
「営業力不足が問題です」
という話。
これを分けて考えると、
本当の問題は、
「新規受注件数が計画を下回っている」
ことかもしれません。
その原因の一つとして、
「提案件数が少ない」
という事実がある。
だから、
「提案プロセスを見直し、提案件数と受注率を高める」
ことが課題になる。
という整理ができます。
つまり、
問題 → 原因 → 課題 → 行動
と分けて考えると、改善策を作りやすくなります。
問題が見つかったら、すぐ対策を決めない
経営改善でよくあるのが、
問題を見つけた瞬間に対策を決めてしまうことです。
例えば、
「残業時間が多い」
という問題に対して、
「人を増やそう」
と判断するケースです。
でも、本当に人手不足が原因でしょうか。
調べてみると、
- 二重入力が多い
- 会議が多い
- 特定社員に業務が集中している
- 承認手続きが複雑
という原因かもしれません。
この場合、人を増やしても残業の構造自体は変わりません。
だから私は、
問題を見つけた後、一度「なぜ?」を挟む
ことを大切にしています。
原因は一つとは限らない
売上が減った。
原因は営業力不足だ。
こう決めてしまうと危険です。
実際には、
市場全体の縮小。
競合商品の登場。
価格競争。
主要顧客の業績悪化。
自社商品の品質問題。
営業活動量の低下。
複数の原因が重なっていることもあります。
そのため、
最初に思いついた原因だけでなく、
別の説明はないか
を一度考えます。
これは先に紹介した「空・雨・傘」の考え方ともつながります。
事実と解釈を分け、解釈を検証してから行動を決める。
問題解決でも同じです。
課題は「行動できる言葉」にする
例えば、
「収益力の向上」
という表現。
方向性としては分かりますが、これだけでは何をすればよいか分かりません。
もう一段具体化します。
例えば、
「低採算商品の価格を見直す」
「仕入条件を再交渉する」
「既存顧客へのクロスセルを増やす」
などです。
さらに、
- 誰が
- いつまでに
- 何を
- どこまで
行うのかを決めます。
ここまで落とすと、課題が実行計画になります。
財務分析でも問題と課題を分ける
例えば、
営業利益率が3%から1%に低下した会社があるとします。
問題
営業利益率が2ポイント低下している。
原因
分析すると、
原材料価格の上昇を販売価格へ十分に転嫁できていない。
課題
主要商品の価格設定を見直し、採算を改善する。
行動
商品別の粗利益率を確認し、値上げ対象と値上げ幅を決める。
ここまでつながると、
「利益率が悪いですね」
で終わらず、経営改善につながります。
「問題の設定」が間違っている場合もある
少し厄介なのが、
そもそも問題だと思っていることが、本当の問題ではないケースです。
例えば、
「ホームページから問い合わせが少ない」
という問題。
だから、
「ホームページへのアクセス数を増やそう」
と考えたとします。
しかし実際には、
アクセス数は十分あるのに、
問い合わせページまで進む人がほとんどいない
という可能性もあります。
この場合、SEOよりも、
- サービス内容
- 料金表示
- 問い合わせ導線
- 信頼情報
を見直した方がよいかもしれません。
つまり、
最初に置いた問題設定そのものを疑う
ことも必要です。
「本当に解くべき問題は何か」
という問いを持つだけで、無駄な対策を減らせます。
問題を細かくしすぎない
逆に、分析しすぎることにも注意が必要です。
原因を深掘りしていけば、
「なぜ?」
はどこまでも続きます。
しかし、経営では行動しなければ何も変わりません。
一定程度原因を確認し、
「ここなら自社で変えられる」
という部分を見つけたら、実行に移します。
つまり、
分析の目的は、完璧な原因を見つけることではなく、良い行動を決めること
です。
良い課題には「自社で動かせる余地」がある
例えば、
「景気を良くする」
は自社だけでは難しい課題です。
「原材料価格を下げる」
も、自社で完全にコントロールできるとは限りません。
一方、
「原材料価格上昇分を踏まえて販売価格を見直す」
なら、自社で取り組めます。
外部環境は変えられなくても、
外部環境に対して自社がどう対応するか
は決められます。
課題設定では、
「自分たちが動かせる部分はどこか」
を見ることも大切です。
会議でも問題と課題を分ける
例えば会議で、
「最近、離職が増えています」
という報告があったとします。
その場で、
「福利厚生を増やそう」
と決める前に、
一度整理します。
問題:離職率が上昇している。
原因:退職者へのヒアリングでは、配属後の教育不足が多く挙げられている。
課題:入社後3か月間の教育体制を見直す。
行動:担当者、研修内容、面談時期を決める。
このように整理すると、
議論が、
「私はこう思う」
という意見のぶつけ合いになりにくくなります。
まとめ
問題と課題は、似ていますが役割が異なります。
問題は、理想と現状のギャップ。
課題は、そのギャップを縮めるために取り組むこと。
そして実務では、
問題
↓
原因
↓
課題
↓
行動
と考えると整理しやすくなります。
重要なのは、
問題を見つけた瞬間に対策へ飛ばないこと。
一度、
「なぜ起きているのか」
「別の原因はないか」
「本当に解くべき問題なのか」
を考えてみる。
そのうえで、自社が実行できる課題へ落とします。
問題解決の質は、
難しいフレームワークを知っているかどうかより、
何を問題として捉え、何に取り組むかを正しく決められるか
で変わります。
Office LOTUSでは、すぐに答えを出すのではなく、まず現状と問題を整理し、本当に取り組むべき課題を明らかにしてから改善策を考えることを大切にしています。
この記事を書いた人

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渥美 友道|中小企業診断士
Office LOTUS あつみ中小企業診断士事務所 代表。金融機関に勤務しながら、副業で中小企業診断士として活動しています。
本業では、営業、経営企画、DX推進などの業務を経験。現在も金融の現場に立ちながら、中小企業の経営改善、財務・資金繰り、事業計画、DX・Web活用などを支援しています。
副業だからこそ、日々の実務で得た感覚や変化を経営支援に持ち込めることを強みとしています。机上の理論だけでなく、現場で使える考え方を、できるだけ分かりやすくお伝えします。
中小企業診断士 登録番号:425952
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