創業融資の事業計画書で金融機関が確認する3つのポイント

創業融資で即落ちる事業計画書の共通点と審査通過のポイント(現役銀行員・中小企業診断士が解説)

創業に向けて事業計画を作っていると、

「売上計画はどこまで細かく作ればいいのか」「自己資金はいくら必要なのか」「金融機関は結局、何を見ているのか」

といった疑問が出てきます。

私は金融機関で企業のお客さまと接する一方、中小企業診断士として経営支援にも携わっています。

その立場から感じるのは、創業融資の事業計画書では、単に「きれいな数字を並べる」ことよりも、その数字に至った理由を説明できることの方が重要だということです。

もちろん、融資の判断基準は金融機関や制度、個別の案件によって異なります。

その前提で、創業時の事業計画を考える際に特に整理しておきたいポイントを3つ紹介します。

1.自己資金は「金額」だけで考えない

創業時によく聞かれるのが、

「自己資金はいくらあれば融資を受けられますか?」

という質問です。

これは、残念ながら「○万円あれば大丈夫」と一律には答えられません。

事業に必要な総資金、設備投資の規模、運転資金、借入額、創業後の収支などによって必要な金額は変わるからです。

日本政策金融公庫も、自己資金について一概には言えないとしたうえで、自己資金と借入金のバランスを考え、余裕を持った資金計画を作ることが大切だとしています。

ここで私が大事だと思うのは、「いくら持っているか」だけではなく、創業に向けてどのような準備をしてきたのかという点です。

例えば、同じ100万円の自己資金でも、

  • 数年間、毎月一定額を積み立ててきた
  • 創業直前にまとまった資金が入金された

では、背景が違います。

後者が直ちに問題になるという意味ではありません。

親族からの支援、資産売却、退職金など、合理的な理由でまとまった資金が入るケースもあります。

大切なのは、

「この資金はどこから来たのか」
「返済が必要な資金なのか」
「創業のためにどんな準備をしてきたのか」

を自分の言葉で説明できることです。

事業計画書は数字だけを見る書類ではありません。

その数字の背景まで含めて計画を整理しておくと、金融機関への説明もしやすくなります。

2.「なぜこの事業を自分が行うのか」を説明する

創業計画では、売上予測や経費だけでなく、

創業者本人の経験と、始めようとしている事業とのつながり

も重要です。

例えば、飲食店を開業するとします。

「ラーメンが好きなのでラーメン店を開きたい」

という思いは創業のきっかけとして大切です。

ただ、事業計画として考えるなら、それだけでは十分ではありません。

金融機関だけでなく、経営者自身も、

「どうやってお客さまを集めるのか」「原価や人件費をどう管理するのか」「なぜ競合店ではなく自店を選んでもらえるのか」

を考える必要があります。

そこで意味を持つのが、これまでの経験です。

例えば、

「飲食店で10年間勤務し、店舗運営や原価管理を担当していた」

「前職で営業を担当し、開業後の見込み客となる取引先との関係がある」

「IT業界での経験を生かし、予約や顧客管理を効率化できる」

といったものです。

華々しい実績である必要はありません。

重要なのは、

過去の経験が、これから始める事業の実現可能性とどうつながっているのか

を整理することです。

未経験の事業だから融資が受けられない、とは限らない

ここも誤解されやすいところです。

未経験業種への創業だからといって、それだけで事業が成立しないと決まるわけではありません。

むしろ大切なのは、

「自分に不足しているものは何か」

を認識し、その不足をどう補うかを考えていることです。

例えば、

  • 経験者を採用する
  • 専門家から支援を受ける
  • フランチャイズを利用する
  • 開業前に一定期間現場経験を積む

といった方法があります。

弱点を隠すより、

弱点を認識したうえで対策を示す方が、事業計画としては説得力があります。

これは融資対策というより、創業後の経営リスクを減らすためにも重要な作業です。

3.売上より「返済できる計画になっているか」を確認する

創業計画を作ると、どうしても売上目標に目が向きます。

「月商300万円」「3年後には売上1億円」

こうした目標自体は悪いものではありません。

しかし、資金計画でさらに重要なのは、

その売上が実現したとき、最終的にどの程度の利益と現金が残るのか

という点です。

売上が大きくても、

  • 原価率が高い
  • 人件費が重い
  • 家賃が高い
  • 借入金の返済負担が大きい

といった状態なら、資金繰りは楽になりません。

返済財源を考えてみる

返済能力を見る一つの考え方として、

税引後利益+減価償却費

という簡易的な見方があります。

例えば、

税引後利益:300万円
減価償却費:200万円

なら、単純化すると年間500万円が一つの返済財源の目安になります。

年間の借入金元金返済が700万円なら、

「この計画のままで無理なく返済できるだろうか」

と検討する必要があります。

ただし、この計算だけで融資の可否が決まるわけではありません。

実際には、

  • 売掛金や在庫の増減
  • 設備投資
  • 税金
  • 生活費(個人事業の場合)
  • 他の借入金
  • 今後必要になる運転資金

なども考える必要があります。

重要なのは計算式そのものではなく、

「利益が出る計画」だけでなく、「現金が回る計画」になっているか

を見ることです。

売上計画は「希望」ではなく根拠から作る

創業計画を見ていると、

「1年目は月商200万円、2年目は300万円、3年目は500万円」

と数字だけがきれいに右肩上がりになっているケースがあります。

もちろん、その通りになる可能性もあります。

ただし事業計画として大切なのは、

なぜその売上になるのか

です。

例えば飲食店なら、

客単価 × 席数 × 回転数 × 営業日数

といった形で考えられます。

サービス業なら、

平均単価 × 顧客数 × 利用回数

などに分解できます。

さらに、

「開業直後から満席になるのか」「認知されるまで何か月かかるのか」「繁忙期と閑散期はあるのか」

まで考えると、計画に現実味が出てきます。

日本政策金融公庫も、売上予測では業界平均だけではなく、地域事情などを加味し、複数の方法から検討することを勧めています。

私は事業計画を見るとき、

数字そのものより、「どうやってその数字を作ったのか」を確認する

ことを大切にしています。

信用情報についても正しく理解しておく

創業者個人の信用情報が確認されることもあります。

ローンやクレジットなどの契約内容や返済状況は、信用情報機関に登録されている場合があります。

ただし、

「過去に一度支払いが遅れたら必ず融資を受けられない」

といった単純な話ではありません。

金融機関等は、それぞれの基準に基づいて総合的に判断します。

また、公共料金や税金についても少し注意が必要です。

口座振替などで直接支払っている公共料金や税金の未納情報そのものが、CICやJICCへ登録されるわけではありません。

一方、クレジットカード払いを利用していて、そのカード代金の支払いを延滞した場合などは、信用情報に影響する可能性があります。

携帯電話についても同様で、通信料金そのものと端末代金の分割払いは区別して考える必要があります。

不安がある場合は、思い込みで判断せず、自分自身の信用情報を確認する方法もあります。

事業計画書は「融資を受けるためだけの資料」ではない

事業計画書というと、

「銀行に見せる書類」

というイメージが強いかもしれません。

しかし、本来は経営者自身が、

「この事業は本当に成り立つのか」

を確認するための資料でもあります。

売上計画を作る。

必要な経費を確認する。

資金がいつ不足するのか考える。

返済しても資金が回るか確認する。

この作業をすると、

「もう少し自己資金を増やしてから始めよう」

「店舗規模を少し小さくしよう」

「固定費を下げた方がいい」

「開業前から顧客候補を増やそう」

といった改善点が見えてきます。

金融機関への説明以前に、経営者自身が計画に納得できること。

私はそれが、良い事業計画の出発点だと考えています。

まとめ

創業融資を考えるとき、特に確認しておきたいのは次の3点です。

  1. 自己資金を含め、創業に向けた資金準備を説明できるか
  2. 自分の経験と事業の実現可能性を結び付けて説明できるか
  3. 売上だけでなく、返済後も資金が回る計画になっているか

「融資に通る書き方」を探すよりも、

自分自身が納得できる現実的な事業計画を作ること

を優先してみてください。

その結果として、金融機関にとっても理解しやすく、説明しやすい計画になります。

Office LOTUSでは、創業計画を単に融資申請のための書類としてではなく、創業後の経営に使える計画として整理することを大切にしています。

事業計画を作ったものの、「この数字で本当に大丈夫なのか」と感じている方は、お問い合わせください。


参考情報

・日本政策金融公庫「創業計画Q&A」
・日本政策金融公庫「創業融資のご案内」
・指定信用情報機関 CIC「信用情報について」
・日本信用情報機構(JICC)「信用情報について」

※本記事は創業計画・資金計画に関する一般的な情報を提供するものです。融資の可否や条件は、金融機関、融資制度、申込者・事業の状況等によって異なります。

この記事を書いた人

Office LOTUS あつみ中小企業診断士事務所
Office LOTUS あつみ中小企業診断士事務所
渥美 友道|中小企業診断士

Office LOTUS あつみ中小企業診断士事務所 代表。金融機関に勤務しながら、副業で中小企業診断士として活動しています。

本業では、営業、経営企画、DX推進などの業務を経験。現在も金融の現場に立ちながら、中小企業の経営改善、財務・資金繰り、事業計画、DX・Web活用などを支援しています。

副業だからこそ、日々の実務で得た感覚や変化を経営支援に持ち込めることを強みとしています。机上の理論だけでなく、現場で使える考え方を、できるだけ分かりやすくお伝えします。

中小企業診断士 登録番号:425952

詳しいプロフィールを見る

Follow me!